全ての国民に一律で給付金!?今注目の特別定額給付金とベーシックインカムとは
- 2020/4/27
- 資産運用・節税

新型コロナウィルスによる影響によって、人々の生活は困窮を極めています。国民が危機的状況にある中、当然各国政府の対応は何よりも大切なものの一つとして挙げられるでしょう。
そこで日本政府は2020年4月20日に、国民一人当たり一律10万円の「特別定額給付金」の配布を閣議決定しました。早くて5月からは、各地域の自治体を通して給付が始まるとされています。
このことを受け、近年議論されてきたとある政策への注目度がかなり増加しています。それは、「ベーシックインカム」です。ですが、まだまだ世間一般の理解は薄いのが事実です。
そこで今回は、今更聞けない「ベーシックインカム」について、基本的な内容から批判まで、その全体像を見ていきましょう。
国民への10万円の給付とは
初めに、そもそもの注目の発端となった特別定額給付金について見ていきます。
特別定額給付金は、「新型コロナウィルス感染症緊急経済対策」において、緊急事態宣言下での不要不急の外出や活動を防ぎ、医療現場で働く人々へだけではなく国民全体が一位団結して危機を乗り越えることを目的として決定されました。
事業費はおよそ13兆円弱に上るもので、その全て経費として国が負担するものとなっています。実施主体となるのは、各都道府県における市区町村の自治体です。
給付対象者は、2020年4月27日時点で住民基本台帳に記録されている人となり、受給権者は、その者の属する生体の世帯主となっています。
では、実際に10万円を給付してもらうまでの手続きはどのようになっているのでしょうか。手続きとしては原則2つの方式が採られています。
1つ目は、郵便申請方式といい、各自治体から送られてきた申請書に振込先口座を記入し、振込先の確認書類と本人確認書類の2つの写しと一緒に自治体へ送り返す方式です。
2つ目は、オンラインでの申請方式になっており、マイナポータルというWEBサイトから上記と同様に振込先口座と確認書類をアップロードする形で行われます。
マイナポータルにログインするためには、マイナンバーカードとスマートフォンアプリの「マイナポータルAP」またはUSB接続のICカードリーダーが必要となります。
対応の機器がそろっており、安定したインターネット環境がある場合にはこちらがおすすめです。
これらの実施が始まるのは、各市町村の決定によって異なるため、チェックしておかなければならない。因みに、申請期限は受付から3カ月以内となっています。
給付が申請者に限定される部分や、今のところ単発的であるところは異なりますが、対象者の金銭的状況などの個別の調査がないことなどが今回ベーシックインカムへの注目を挙げる要因となったのです。
ベーシックインカムとは
ここまで、特別定額給付金について見てきましたが、今度はベーシックインカムについて詳しく見ていきましょう。
―ベーシックインカムの内容
ベーシックインカムとは、政府がすべての国民に対して、最低限の生活を送るのに必要とされる金額を定額かつ定期的に現金で給付する政策のことを表します。
ベーシックインカムは、生活に困窮している一部の人たちを対象とするわけではなく、世帯当たりの収入など受給において線引きがされることもありません。全国民が一律で給付金を手に入れられるのです。
―ベーシックインカムの利点
ではこのベーシックインカムが一体どのような効果を社会にもたらしてくれるのでしょうか。
一つは、貧困対策となることです。特に、日本で多く見られる「ワーキングプア」に対して強い影響力を持ちます。
ワーキングプアとは、働いても働いても貧困から抜け出せない「働く貧困層」にあると解釈される人々のことを指します。
ワーキングプアとされる人々は、単純労働や長時間労働に仕方なく身を任せなければいけない状態にあります。そのような仕事は同時に、低賃金で肉体的にも精神的にもしんどいものが多いとされています。
更に、それらの仕事はマニュアル化された機械的な仕事が半数を占めており、自身の労働の価値を受け入れることもできずに、一日のほとんどを仕事が覆うようになります。
これによって、貧困格差の拡大や自殺者の増加が頻繁にみられるようになってきましたが、ベーシックインカムはこの問題を解決できます。
ベーシックインカムが供給されることで、「生活のためだけに働く」という価値観のもと、生きるために最低限の賃金を得るために一日を占めている仕事から人々を解放させることができます。
そうすると、企業は賃金を上げることなしには労働者を雇えなくなります。加えて、ロボットやAIの導入にとても前向きになるのです。
よって、ロボットやAIを研究する研究者へ資金が投入されることとなり、必要のない労働者が減るだけでなく日本の科学技術の更なる発展も見込めます。
このことで、必然的に質の低い仕事もなくなり、本当に社会にとって有益な仕事だけが残るようなサイクルも生まれるようになります。
女性の「無償労働」が可視化されるといった可能性もあります。これまで見られてきた女性の家事や育児といった「労働」は無給であるため統計には含まれてこなかったという問題があります。
この「無償労働」によって得られる経済的価値は全世界で10兆ドル以上はあると推定されています。
ベーシックインカムは、この無償労働問題のソリューションにもなり得ます。企業などで働くことだけが仕事であり、有償であると言った価値観を無くし、男女平等社会へ近づくことも可能にするのです。
他にも、手続きが複雑で時間がかかったり対応に難があったりすることを問題視されていた社会保障性の簡素化や行政コストの削減などへも前向きな影響を与えるとされています。
―批判とその反論
一方、これらに対して批判があることも事実です。一つは、勤労意欲が失われるといった意見でしょう。
ですが、この批判に対しては、実際に特定のコミュニティへ試験的にベーシックインカムを導入した際に、勤労実態へは影響を与えなかったことや非道徳的な消費が増加したなどといったことが見られなかったという結果によって反論されています。
勤労意欲と合わせて議論に挙がる批判に、財源確保の問題が挙げられています。この財源については、現在取り組んでいる社会保障を切ることで対処できるとしている人もいますが、実際問題それだけでは上手くいきそうにもありません。
他にも、富裕層に対してより累進的な所得税を課すことも反論にありますが、政治家の汚職事件などに鑑みると何とも言えない解決策です。
これに対して、「現代毛兵理論」の観点から、そもそも財源は確保せず、インフレにならない程度まで国債を発行すればいいのではないかという考えもありますが、2020年時点の日本の法制度では採用することのできない考えだとされています。
ベーシックインカムとは まとめ
今回の「コロナショック」は、これまでの経済破綻とは異なり供給への大きなショックであるため、無暗に消費を刺激するような総需要へのアプローチはあまり効果をなさないとされています。
更に、自然災害などが起きた場合とも少し違い、供給能力は依然と保持しつつも、国民がそれらを消費できないといった特別な状況にあるのです。
このことから、これまで行われてきた経済政策ではなく、失業者や企業孫ザクに必死な人々への迅速な現金での対応がモノを言うでしょう。
この波を越えた後に、経済が回復するための能力が社会に残るようにするためにも、今回の特別定額給付金の給付を機に、ベーシックインカム施行への議論が活発することが期待されています。