「100万円未満の絵画」を購入して節税対策
- 2018/7/9
- 資産運用・節税

美術品取得における、減価償却資産の基準が2015年(平成27年)1月1日に改定されました。
改定前は、1点20万円未満の美術品(歴史的価値や希少価値のないもの)と規定されていましたが、大幅に引き上げられたことによって、節税術の幅が広がったと言えます。
減価償却資産としての取り扱いであるため、「時の経過とともに、資産価値が減少することが明らかな美術品」とされています。これは、人の目に触れる場所に飾ってある美術品は、光もあたれば温度・湿度も変わるため、劣化していきますね。
つまり、室内や廊下、フロアに飾る絵画を購入し、節税する。ということができてしまいます。本記事では、美術品取得における減価償却資産を活用した、節税スキームを解説していきます。
Contents
減価償却資産に該当する美術品は?!
まず、減価償却資産として認められる美術品はどういったものでしょうか。
金額としては、100万円未満で歴史的価値・希少価値のないものです。また、100万円以上だったとしても、経年劣化によって資産価値が低下する美術品であれば、認められるようです。
美術品も絵画や彫刻だけでなく、以下のものを含みます。
- 絵画(壁画含む)
- 彫刻
- 工芸品(伝統工芸品)
- デザイン・アート作品
- 写真
- 染織
どこからどこまでが歴史的価値を有しているか、希少価値があるかは税理士さんに相談していただくとして、考えるだけでも幅広く節税できると考えても良いです
美術品取得にかかる費用は経費として盛り込める
美術品そのものの金額だけでなく、取得のための経費をすべて盛り込めます。基本的には、それらも合わせて100万円未満になります。
具体的には、
- 送料
- 梱包・包装費
- 額縁代(額装代)
- 台座・ケース代
- 販売手数料
などです。これら諸経費も計上する必要があるため、留意しておきましょう。
減価償却の期間は?!耐用年数について
美術品を取得し、減価償却資産として計上することは理解できました。耐用年数はどれくらいの期間なのでしょうか。
基本的に定められているのは、金・銀・銅や鉄などの金属作品か。そうでないかです。
- 金属製の美術品:8年
- 金属以外の美術品:15年
金属作品は8年、金属以外の絵画や彫刻、陶磁器などは15年が耐用年数です。
償却の方法は、「定額法」または、「200%定率法」を選択できます。また、取得金額が10万円~20万円未満の場合、3年にわたって均等額を償却することもできます。
中小企業や個人事業主でも、取得金額30万円未満は償却可能
資本金が1億円以下の中小企業や青色申告をしている個人事業主の場合、取り扱いが異なります。
取得金額30万円未満の美術品は、年間300万円に限り、少額減価償却資産として、一括償却もできます。
この様に、中小企業や個人事業主でも利用できる制度ですので覚えておきましょう。
また、飾った期間が1年未満や取得金額が10万円未満であれば、少額減価償却資産として、すべて経費として計上できます。
有名な美術家・芸術家や新鋭アーティスト、人間国宝の作品は?!
歴史的価値や希少価値と考えると、解釈が難しくなります。すべての故人が生み出した美術品が、歴史的価値を有するものなのでしょうか。
経年とともに値上がりしていく美術品はこの限りではありませんが、多くの方が知っている美術家・芸術家でも、価格の変動が横ばいという作品もあります。
取得する前に、専門家に確認することが望ましいですが、ピカソやシャガールの作品でもそのような美術品はあります。
誰もが知っている方の作品を取得しつつ、節税に繋がる可能性があるのは魅力的ですね。
節税方法は節税目的ではない!
美術品取得において、結果的に節税に繋がる方法があります。
これらは、もちろん、節税目的で行うのは厳禁です。用途や理由が明確だからこそ、結果的に節税に繋がります。
税理士など、専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。
なぜ、オフィスやマンションに美術品を設置するのか
制度だけで考えてしまうと、100万円未満の絵画を購入し、人目に触れるところに飾っておけば、節税に繋がってしまいます。
しかし、何も考えずに取得するのではなく、意義を考えましょう。
美術品をオフィスやマンションに設置することで、その空間を素敵にみせることができます。単純な節税に繋がるだけでなく、費用対効果を高めることになるのです。
無機質な空間で仕事や生活をするより、アート作品や美術品があるところの方が、空間の印象が変わります。空間の雰囲気が変わることによって、相乗効果が生まれるのです。
企業であれば、絵画をオープンスペースに飾っておくことで、外部の方からの見られ方が変わります。アピールにも繋がりますし、企業文化のメッセージを間接的に伝えることもできます。また、社員のモチベーション向上や人格形成、社員教育にも繋がります。
また、マンションのエントランスやラウンジに美術品を飾ることで、住人や来客者を和ませることが可能になりますし、入居したいと思う方が増えたら、結果的に資産価値が上る可能性もあります。
節税だけに目を向けるのではなく、なぜ美術品を設置するのかを考えておくと良い買い物に繋がるでしょう。
取得のために知識を身につけると有利
取得のための費用が100万円未満であれば、減価償却資産として計上できるというのを先ほど伝えました。
取得費用に関してもできるだけ、100万円に近い方が良いでしょう。
国税庁のホームページには、取得費用に関しても盛り込まれると記載されています。誰かに購入を委託して、その費用まで盛り込まれてしまうと、絵画そのものの金額は下がってしまいます。彫刻やアート作品においても同様です。
そのため、自分で相場などの知識を身につけると良いでしょう。
ここでいう知識は美術品の価値ではなく、購入しようとしている絵画などが過去にどれくらいで取引されていたかなど、実績を調べるということです。
投機的に絵画を買うわけではありませんので、値上がりを期待するものではありません。しかし、美術品の取引相場は、どういったことが起こるかわからないのも実情です。
新鋭のアーティストの作品を取得し、未来に賞を獲ったことによって、相場が跳ね上がることもありえるでしょう。
美術品の取得は、単純な節税対策だけでなく、夢のある節税とも言えるかもしれませんね。
まとめ
美術品取得における減価償却資産は、2015年(平成27年)1月1日に改定され、20万円未満のところから、100万円未満まで引き上げられました。
これは、年月の経過とともに資産価値が低下する場合に限ります。この場合、100万円以上のものも認められる場合もあります。
つまり、より多くの金額を経費として盛り込めるようになり、節税効果も高くなったと言えます。
もちろん、絵画や彫刻、アート作品などの取得は、節税目的ではありません。オフィスやマンションなどに飾る目的や理由が必要です。美術品を飾ることでプラスなことも起こります。
企業であれば、来訪者にメッセージを伝えることやアピールにも繋がりますし、それが名だたる芸術家の作品であれば、見る目も変わります。また、社員のモチベーションや人格形成にも寄与します。
マンションであれば、空間を和ませることもできるため、エントランスやリビングなどの価値も高まり、入居したいと考える人が増える可能性もあります。
それだけでなく、投機目的で購入するわけではありませんが、将来、美術品の価値が跳ね上がる可能性も有しています。
節税方法の一つとして、100万円未満の絵画を購入するというのを検討してみませんか。