ヘッジファンドを徹底解剖
- 2018/8/30
- 資産運用・節税

ヘッジファンドと聞いて、何を思い浮かべますか?
超富裕層に話が来るような投資案件で、投資信託と同じように思っている人もいるかも知れませんが、少々違います。
ヘッジファンドは、「ヘッジ(Hedge)」と「ファンド(Fund)」の2つの単語からできあがっています。
「ヘッジ」は「リスクヘッジ」という言葉からイメージがつくと思いますが、分散という意味です。「ファンド」は、資金や基金という意味で、機関投資家や富裕層から資金を集め、運用し収益を得て分配します。
つまり投資先を複数に分散させ、リスクを回避しながら資金を増やしていくことは同じですが、投資信託と違う点は、市場がどんな状況だったとしても、高い収益を上げていく方針の運用を行います。そのため、投資先として選ぶのは金融商品だけではありません。
資産を託す側からすれば、収益をあげていくことは当たり前のように感じますし、収益をあげられるファンドに資産運用を任せたいと思います。しかし、運用方針によっては損失を減らす努力にシフトチェンジします。
ヘッジファンドに関して簡単に書きましたが、深く知っておくと投資をする際に選択肢が広がります。
本記事では、ニュースなどでよく目にするヘッジファンドについて、さらなる理解を深めるために徹底解剖していきます。資産の運用を任せる前に理解しておくと、選択肢が広がるでしょう。
投資信託とヘッジファンドの違い!
プロにお金を預けて運用してもらう点は、投資信託もヘッジファンドも一緒です。しかし、明確に違う部分があります。では、どの点が違うのでしょうか。
投資信託は、基本的には誰もが参加できるため、いわゆる公募投信と言われています。
ヘッジファンドは、資産運用を任せたいとしても、厳しい基準があり、限られた人にしか話がきません。つまり、私募投信になります。
そのため、少額で始められる投資信託は、1万円程度からですが、ヘッジファンドへ資金を託すとなると、数千万円~億を超える金額になります。
どんな状況でも利益を追求していくため、不動産や株といった伝統的な資産だけでなく、金融先物や商品先物も行います。レバレッジを利かせながらリスクを取っていくため、ハイリスク・ハイリターンの運用になっていきます。
そのため、市場全体が低調気味だったとしても、ヘッジファンドは資産を増やしていくための投資戦略を行います。そして、市場の影響を受けにくいポートフォリオを組んだりします
相対収益と絶対収益の違い
収益をあげていくことは、一般的な投資信託もヘッジファンドも同じです。しかし、運用方針が大きく違うため、「相対収益」と「絶対収益」という言葉で言い表されます。
投資信託の運用方針である、「相対収益」は、基準となる値より上回ることが成果目標となります。株価指数や債権指数などが基準とされることが多いですが、市場が下落してしまった場合は相対的に下がります。そのため、契約した時より上がらず、損失を生み出してしまうこともあります。市場が上昇傾向にあれば、合わせてリターンも増えていくため、今後の市場を読んでいくことが重要になります。
動かせる資金の状況も異なり、相対投資の場合は、ファンドが動かせる資金の上限いっぱいにポートフォリオを組みます(フルインベスト)。この状況では、下落局面に出くわした時、さらに資金投下して、基準となる指数を引き上げることはできません。
市場が値下がりするなら、「下がり切る前に売却してしまえば良い」と考えます。しかし、売却後に値上がりする場合もあり、そのリスクを嫌う傾向にあります。
それに比べ、ヘッジファンドの運用方針である「絶対収益」は、どんな局面だろうと絶対に収益を出していく方針で運用をしていく、いわば運用目標です。絶対に儲かる投資というわけではありませんので、読み違えないでください。
絶対収益の場合、運用内容は、規制の強い投資信託と違い、運用の自由度が高いです。さらに、ファンドマネージャーの判断で運用を行うため、投資家の判断が入ることはありません。リスクマネージメントを行いながら、収益が狙える投資を選んでいきます。株式が下落局面ならば、上昇傾向にある現物投資を行うことや、空売りやオプション取引も行います。あらゆる手段で収益を狙うため、その分、潤沢な資金が必要になります。
目的が違うから、アプローチも違う。それを覚えておくと選択肢が広がりますね。
ヘッジファンドの話は富裕層や機関投資家が中心!問題点も
ヘッジファンドの場合、資産を増やしていくための手段が多岐にわたるため、潤沢な資金が必要になります。そのため、集める額も巨大になり、最低数千万円からというのも納得できます。さらには、ファンドの出資者も限定されており、通常は50人未満です。
さらにファンドマネージャーの報酬が、成果報酬型になっており、その額も高めに設定されます。値上がり分の20%が目安となり、さらに手数料として固定で数%かかります。
運用する側は、モチベーションが高くなるようなルールを持ち、投資家側は完全に任せた形で、資産を運用してもらえます。
良いことばかりではなく、いくつかの制約もあります。
ヘッジファンドに投資する最低額が高いだけではなく、一定期間、出資金を返してもらえません。特に投資一年目は返ってこず、それ以降も返ってくる時期は限定されます。さらには、監督官庁に届け出を出す必要がないため、どのような運用を行っているかブラックボックスです。解約する場合も一ヶ月以上前に通告しなければならないなど、即時換金はできません。
さらに、元本の十倍以上のレバレッジをかけているため、不測の事態による返金対応に応えるため、かなりの資産を売却することになります。その結果、金融市場が混乱を来す可能性もあり、連鎖的に被害が飛び火する可能性もあります。
少額から投資できる絶対収益の運用はある?!
基本的に、ヘッジファンドへの投資は、富裕層か超富裕層など、数千万円から億単位の金額が出せる人が最低条件となります。そのため、資金が用意できない人は、ヘッジファンドへの投資ができません。しかし、数千万円程度の資金がなくても、ヘッジファンドに似たような仕組みを使って運用しているファンドはあります。
例えば、プライベートバンクやラップ口座なども少額で始められる金融商品です。運用資金を投資して、運用を一任するため、絶対収益のような方針で運用していきます。それでも開設するために数百万単位で必要な投資案件であり、数千万円に比べると安いですが、それでもハードルが高い人もいるでしょう。
運用を一任するため、動きが見えませんし、さらには高い手数料や報酬も支払う必要があります。投資に共通することですが、元本が大きければ、運用コストが高くとも十分なリターンが得られます。しかし、額が少なくなれば、リターンの額も相対的に下がってしまうため、高いリスクの割にはリターンが思った以上に少なく感じます。
最低の金額が数百万円からと、ヘッジファンドに比べると少額で始められる絶対収益の投資案件もあります。しかし、元金が少なくなるため、高い手数料や報酬がかかってまで投資するうまみは少ないように感じます。もし、投資する場合は、その点も踏まえて考えてみてください。
まとめ
ヘッジファンドは、数千万円から数億円を最低投資金額として設定されているため、富裕層や超富裕層向けの金融商品です。投資信託と似ていますが、運用方針が異なり、絶対収益で利益を狙っていきます。
絶対収益は、基準となる数字を設けずに、どんな状況でも絶対に収益を狙っていくという運用方針で、市場に影響されないようなポートフォリオを組み、金融商品だけでなく、商品先物や金融先物で収益を獲得していきます。空売りやオプション取引も行うため、その投資手法はフレキシブルと言えます。
ただ一般的な投資信託とは違い、誰でも投資できる公募投信ではなく、限られた人が投資できる私募投信です。そのため、監督官庁には届け出を行わずに運用するため、制限がかかりません。
ハイリスク・ハイリターンの投資を行いますが、手数料や報酬の額も高く設定されており、資金力のある人が投資するからこそ、十分なリターンも得られます。
仕組みがわかれば、中身も推測することができます。ご自身の投資に活かしてください。